海水
土曜日、酷い頭痛を覚えての起床。
体を起こして、ふと違和感に気付く。カーテンの隙間からは光が見えないのだ。
空かさずiPhoneを起動させると、「19:37」と表示されている。
昼間に起床すると一日無駄にしたな、としみじみ思うが、ここまで来るといっそ清々しく諦めもつくというもの。再びベッドに身を沈める。二度寝の幸福は筆舌しがたいものがある。ちらりと横目で部屋を見る。机の上に雑然と缶ビール。堆く積まれた酒瓶の数たるや。この量を二人で飲んだのか、と思うと慄然してしまう。
大人になったなあ、とか思いたくないことを思ってしまった。
この作品を見ているうちに眠ってしまったらしい。ちょうどDAOKOと米津玄師の声が室内を満たす。満たす、満たす。僕の一日の始まり。
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金曜日の夜は決まって外食だ。社員さんでも取引先の社員さんでも、上司でも女史でも大歓迎なのだが、できれば気の合うやつと食卓を囲みたい。
ただ土日で嘱託された仕事を終えなければならないので飲み過ぎには注意する。注意しているつもりなのだが、二次会、三次会とズルズル引きずって、引きずられて、記憶を失うのが常になっている。
極稀に、普段話す機会がない人たちと食事ができるのだが、そんな夜は慎む。
きちんとネクタイを閉めて、相手の目を見て話をする。猫を被る。にゃん。尻尾を振る。わん。
昨日(今日の深夜〇時という表現が正解になるのだが)は、「いざラーメン!」と誘われたので、仕方なく付いて行った。僕の担当女史になるSさんとは案外気が合う。年上故なかなか強烈な一言を息を吸うように語り出す大胆な女性だ。大学を卒業するまでは両手で数えられないほどの男性と交際していたらしいが、「はあ、そっすか」としか言いようがない。彼女は未婚、過去のステータスは必要十分条件外のことなのだ。
なぜ僕が呼ばれたのか、結局、進捗確認をしただけでほとんど会話をしないまま帰宅。
なんだったのか、と。
パソコンを開いて、作業を開始。大体、文字を打ち込んで15分もすれば今日の自分の調子を理解できる。気分が乗っていないときにいくら文章を綴ってもゴミの量産でしかない。そんなときは読書をするか、カラオケする。気分を一時的に沈めるか、爆発させるかの二択しかないのがなんとも情けないことだが、案外効果的だ。
畢竟、無理をしても何一ついいことはない、ということである。
作品を書くにあたって、僕の書く話では登場人物の何人かは亡くなってしまう。
『同じような表現が出てくるのは、書き手の根底にコンプレックスがあるから』
と有名な言葉があるが、僕も何かしらの劣等感とか蟠りがあるのかもしれない。
確かに、影響される作品というのはどれも人が死んでいる。
一世を風靡した作者、住野よる(僕は彼の話はあまり好きではない)でも「死」がテーマになっているのは言うまでもない。
だとすれば、何が僕のコンプレックスなのか。
この「何」を知ることが僕の物語を綴る理由なのだと思う。
ーtssaka 4.21