澄明
好きなことを好きだと言えない世の中だ。
高校のとき、深く噛み締めた思い出がある。
今現在はそんなことはない。「芝蘭の化」とでも言おうか、自分の趣味や生きがいを誇示して、共有し、理解しあえる人たちと多く巡り会うこと出来ていると思う。
東京に出て来た友人たちとも数回ではあるが、内容ある密の濃い時間を過ごすことができた。彼氏、彼女等も社会の縁に立った人間独特の悩みや葛藤を抱いていた。
焦ることはない。まだ20歳だ。
できることなら「もう20歳だよ?」なんて諦念を抱かないで欲しい。
僕の友人たちにそんな情けない言葉を吐露して欲しくない。
先の見えない未来。
ただ各人の腹部にきちんと一本の筋が通った意志や思考、ひいては夢が必ずあるはずだ。
「やりたい事がないから」とは大仰であろう。
「あるけど出来ない」が正解ではなかろうか。もしくは「やりたい事が分からない」。
僕はこうして時々日記をつける事で己を理解し深めようとしているけれど、そんな具合で白紙のルーズリーフに「したいこと」「したくないこと」「別にしなくてもいいこと」を列挙してみてはどうだろうか。
したいことはとことん貪欲に取り組む。したくないことは後に「しなければならないこと」に変わるのだから今のうちに入り口を覗くべきだ。
問題は「別にしなくてもいいこと」である。
「1日はさ、24時間なんだよ?」と東京に出て来てすぐに言われたが、これは暗雲立ち込めた社会に精通している人間の台詞なのでひとまず置いておく。
睡眠、食事、休憩など24時間のうちに削られる時間は必ずある。
何を当たり前のことを、と思われるかもしれないが、社会に出るとこのことを一から突き詰める必要がある。
畢竟、「自分の趣味や、やりたいことに当てる時間」を理解しなければならないと言うことだ。
泥濘の中、進んで行動することは困難極まりない。「別にしなくてもいいこと」を上手く調整して、その時間を少しでも「しなければいけないこと」と「したいこと」にあてることをオススメする。
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僕にとって15日は、日本人言うところの月曜日と同じだ。
鬱鬱たる気持ちのまま徹夜で作業を終えなければならない。
〆切だ。
妥協して完成させた瞬間ほど後味の悪いものはない。今回の作品はそんな出来だった。
昼にゲラを貰い、赤入れを始めたときには情けない気持ちで一杯になった。
斃れて後已むとはならないように僕は生きていきたいと思う。
ーtasachi 5.15